薄野喫茶パープルダリア プロデュース

PRODUCE:野村ソウ
ART DIRECTION:野村ソウ
GRAPHIC DESIGN:野村ソウ
GRAPHIC DESIGN:杉原茉侑
INTERIOR DESIGN:森菜摘
PHOTO:古瀬桂

 自社のワンダークルーで運営している「薄野喫茶パープルダリア」のプロデュースを担当いたしました。この場所は50年続いたTOPという喫茶店があった場所です。さらにこの場所は「探偵はBARにいる」の中で「喫茶モンデ」として登場したロケ地でもあります。こういった歴史ある場所が空くことになったのもコロナ禍の影響なのかもしれません。
 近年、ススキノ・大通り界隈からなくなってしまった数々の喫茶店があります。今のススキノであれば逆に喫茶店を新たなスタイルで復活させることができるのではないか?という考えからプランニングに入っていくことに。50年続いた喫茶店があった場所に、また新たに喫茶店をオープンするにあたって、何か温故知新のような行為を通した表現がしたいと考え、昭和モダンの喫茶店文化を研究することにしたのですが、面白かったのは「花」がとても象徴的に使われているように感じたことです。例えばお店の名前自体に花の名前がついていたり、ド派手な花がお出迎えする内装や、席に花を飾る店舗が多かったり、カップにも花の装飾が多かったり。きっと携帯やSNSなんかが無い時代では、今よりも対面することをみんな大事にしていて、その瞬間を華やかにしてあげたいという、時間を大切に考える想いがあり、その気持ちの表現として花が大きな役割を果たしていたのではないかと思いました。そうして決まった店名の「パープルダリア」。ダリアの花言葉は、「優雅」「気品」「栄華」「裏切り」「移り気」「不安定」などとあります。花言葉がまるで夜の街ススキノを表しているようでした。ちなみに「パープル」は紫が赤と青を混ぜた色であることから、男女が行き交う街ススキノを表現したものです。「花」「ススキノ」「喫茶店」のキーワードを大切に、懐かしいけど新しい喫茶店を業態コンセプトとして開発しています。
 メニューは、手間暇をかけた煮込みハンバーグカレーや懐かしのオムライス、ビーフシチューなど洋食メニューを豊富にラインナップしながら、プリン、フルーツサンドなどの軽食と、まるでミニブーケのようなコンセプトを体現するオリジナルのパフェも開発。具体的な時間帯ごとの来店目的を様々なペルソナイメージから作りあげ、商品開発に展開することで、皆さんが幅広いシチュエーションでお楽しみいただける、喫茶・レストランスタイルを作っています。
 実際にOPENしてからは様々な年代のたくさんの方にご利用いただき、色々な声をいただきましたが、「今までであればススキノのあの場所では、なかなか見られなかった時間帯に人の流れが見られるようになり、ススキノのお昼が明るくなった」と言われたことが特に印象的でした。プロデュースしていく中で、飲食店として大事な立地条件を強い武器として利用することを考えながら、地の利を活かすことを大切に進めていき、さらに新たな可能性を模索するように進めていきました。飲食店の出店ひとつで地域環境に変化をもたらすことができる好例になれば嬉しいです。歴史を飲み込みながら現代的に吐き出されたこのお店が50年後も生き残っているかはわかりませんが、50年前からの歴史をしっかりと感じながら、次の50年を目指すために必要なことをしっかりと考え、若い方もたくさん訪れていただけるいい業態になったのではないかと感じています。みなさんに長く愛されていくことを願っています。

〒064・0806 札幌市中央区南6条西4丁目1番地11

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